日本経済新聞 2001.8.23

大学発VB関西で活発に

関西の大学で生まれた研究成果の実用化を目指し教授らがベンチャー企業(VB)を設立する「大学発VB」の動きが活発になってきた。ナノテクノロジー(超微細技術)など最先端分野での起業が相次ぎ、株式公開も視野に入ってきた。ベンチャーキャピタル(VC)もリスクマネーの供給先として関心を示し、積極的に関与に動き始めた。

「先端」続々 ナノテクも

 VCも期待、出資積極的化

ロボット工学の石黒浩和歌山大学システム工学部教授らが昨年八月に設立したITS(高度道路交通システム)関連のVB、ヴイストン(大阪市、大和 信夫社長、資本金四千弐百万円)は独立系VCのフューチャーベンチャーキャピタル(FVC、京都市、川分 陽一社長)から二千万円の出資を受け入れた。FVCは筆頭株主となりさらに五千万円を追加出資する方向で交渉している。VC側にとっても「技術の裏付けがきちんとしており大学の技術支援も継続的に受けられる。外部からも経営者を招いている点も評価する」(川分社長)と、大学発VBに期待が高まる。 石黒教授はヴイストンに単に研究成果を提案するのではなく、同社に2.4%出資し取締役に就任、毎週1回は大阪で大和氏らと打ち合わせする。教授らが特許を持つ技術を基に三百六十度の全視野角を撮影できる映像センサーをITSや防犯向けに自動車メーカーらと開発している。

京都と兵庫に続き大阪でも府内の大学で開発された技術を民間に橋渡し実用化させる大阪TLO(技術移転機関)が七月から活動を始めており、大学発VBが育つ環境は整いつつある。近畿経済産業局も大学発VBを育成するためVB経営者らでつくる研究会を七月に立ち上げた。

民間企業側には大学官の経営者としての資質を疑問視する声も依然強い。また国立大の場合、週四十時間は大学の研究や教育に原則的に従事する必要がある。このため大学の規定適用が厳格過ぎると、大学教官のVB志向の芽を摘み取ってしまうとの懸念も指摘されるが、研究成果をビジネスに直結させる「大学発VB」には、閉そく状況の関西経済を活性化さえる大きな役割を期待されている。


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