Sota博士が右手で示す先についている銀色の丸棒。

この先端の特に細くなっているところ数cmは「エンドミル」と呼ばれる工具です。

エンドミルの役割、それは「削る」こと。

といっても、ただ力任せに削るわけではありません。
エンドミルは高速で回転しながら、金属や樹脂を少しずつ、正確に、狙った形に削っていく、とても繊細な職人です。

ドリルが「穴をあける専門家」だとしたら、
エンドミルは「形を作る万能選手」。
平らな面を作ったり、溝を掘ったり、角を落としたり、
ときにはロボットの関節のような、なめらかな曲面まで生み出します。

ロボットの部品――
フレーム、アーム、センサーを取り付けるための土台。
それらの多くは、最初はただの金属の塊です。
その塊を、設計図どおりの“意味のある形”に変えていくのが、
このエンドミルの仕事なのです。

しかもエンドミルには、いろいろな「性格」があります。
先端が平らなもの、丸いもの、刃が2枚のもの、4枚のもの。
削る素材や形状に合わせて、最適な一本が選ばれます。
まるで、ロボットに合わせて道具を持ち替える研究者のようですね。

普段、完成したロボットを見るとき、
この小さな銀色の丸棒の存在を意識することは、あまりありません。
でも実は、ロボットの精度や動きの美しさは、
エンドミルがどれだけ丁寧に「削ったか」に支えられているのです。

次にロボットの金属部品を見かけたら、
「この形、どんなエンドミルが作ったんだろう?」
そんなふうに想像してみてください。
ものづくりの世界が、少しだけ身近に感じられるはずです。